小倉駅まで来て、その町の大きいのにびっくりする。こんな所は寝るところを探すのが大変だ。とりあえず小倉駅に行く。
聞いてみると、乞食を閉め出すので、夜は誰も駅の構内に入れないそうだ。親切な駅の人が、「駅長に頼めばどうか」と言ってくれたので、ピカピカの駅長室に「今夜泊めて欲しい」と頼みに行く。俺が男前なので、特別に泊めてもらえることになり、一人ベンチでのんびりする。
夜中にみんなを追い出しに来た係りの人も、俺だけには何とも言わずにでていってくれた。気後れしたけど、やはり思い切って駅長さんに頼んで良かった。この街は、有名な工業地帯だけに、大変な発展ぶりだ。町はビルが一杯で、駅も変な人が大勢いる。よっぱらい、チンピラ、ルンペンと、まあ気持ち悪くなるほどだ。俺のような紳士?は、本当に少ない。
手持ちのお金が5円しかないので、なんにも買えない。朝が来ても、朝食は郵便局が開く9時過ぎまで食べられない。ま、今夜は安全に寝られることを思えば、昼間の心配は嘘のように嬉しい。誰もいなくなったベンチで、一人えらくなったような気持ちで寝る。
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