朝9時にスタンドを出発。うきうきする程気持ちが良い。道の端には傘になるような大きな「ふき」が一杯生えている。まるでガリバーの世界に入り込んだみたいだ。記念に写真を撮る。気持ちよくすいすい走る。寒さに震えることなく、たっぷり寝るとこんなに元気になり気持ちが良いなんて!足も機嫌良く、まるで空を飛ばんかのように力が入る。
帯広市内の食堂でご飯を食べる。お金を払おうとすると、店の親父さんが、「ただで良い」とご馳走してくれる。だから言うのじゃないが、この親父さんもいい人だ。
しばらく走り、田辺さんの家でご飯を炊かせて貰う。奥さんにおかずを貰い、ついでに食べさせて貰う。ご主人は庭石が好きだそうで、家の前に大きな石が置いてあり、ずいぶん遠くから運んできたそうだ。石にくっついている苔が値打ちで、この苔に傷を付けないで車に積むのが大変だったと、嘘のような話をしてくれる。日本も広いとつくづく思った。こんな石の何処が良いのか俺にはさっぱりわからん。大金をかけて庭をわざわざ狭くしているのだから、田辺さんという人は面白い人だ。それにとてもいい人で俺にとても親切にしてくれる。今夜泊まっていけと行ってくれたが、時間も早いし、それに何よりも速く北海道を終わりたい気持ちが強く、有り難く遠慮する。子供達の写真を撮り、おみやげにめずらしい十勝石と美味しい漬け物を貰い、田辺さん宅を出発する。
しばらくして、貰った漬け物を食べながら走ろうと、新築中の家があったので、水道をかりに行く。沢山の人がいて、「ついでにおにぎりを食べて行きなさい」と、歓迎してくれる。この家のおばあちゃんは、若い頃散髪屋さんだったそうで、汚い俺を見て、散髪をしてくれる。腹は一杯になるし、頭は軽くなるし、かねばあちゃんおおきに!三時頃荒木さん宅を出発する。
途中で中大生の5人組と一緒になる。広尾町まで一緒に走ったが、ガスがひどくなり、ここで旅館に泊まるという彼らに仲間に入れて貰い、一番安い旅館を探して歩く。「6人だからうんと安くして欲しい」と彼らが粘って交渉してくれ、400円で泊まれることになる。風呂もあるし、布団に眠れる、嬉しいな。いい調子でお互いにサインをしあい、遅くまでいろんな話をする。いい仲間が出来て嬉しい。
人間は死ぬまで一人でいかなあかんのだから、もっと強くならなければダメだと思うけど、一人ではどうにも生きていけないのを思い知らされる。強く生きると言うことは、自分一人でと言うのじゃなく、周りの人たちの力を上手に借りることが出来るようにならなあかんと思う。この世の中は、本当にいい人が半分いるのだから、一人で勝手に悩んだり、怒ったり、あせったりすることはないのだ。
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