日本一周自転車旅行 岩手県〜青森




水沢市 胆沢城で


・昭和39年7月21日

・宿泊地ー水沢市(岩手県)胆沢城跡
・走行距離ー?キロ
・使用金額ー?円
・天気ー曇り

一度ものすごい雨が降ったが、親切な電気屋さんで雨宿りさせてもらい、ご飯まで食べさせて貰う。その後はとても調子よく、これがサイクリングだ、なんて独り言を言いながら走る。暑くもないし車も少ないし、路面もこれが地道かと思えるようにきれいに踏み固めてあり気持ちいい道だ。国道がガタガタのジャリ道で、県道がこんなにいい道だなんて、いったいどうなってるんだ。松島ー松山町ー古川市と気持ち良く走る。昼食を食堂で食べたが、安いしうまいし、いいことだらけだ。

食堂を出てすぐに大沢さんに追いつく。一緒に走ることにする。話がはずみ楽しいこと。夜は大沢さんがテントを持っているので一緒に寝かせて貰う。肉を買い、ネギやじゃがいもは近くの人に貰い、今日は今までにない豪華な食事だった。食後のデザートのリンゴも近所の人に一杯貰う。東北の人の親切をここでも味わう。夜、裏のおじいさんがテントに遊びに来て、お化けがこの町に出たという話やら、面白い話を遅くまで話し込んで帰った。もう遅いのでお休み。今日は最高の一日だった。


水沢さんと豪華な食事

東京都武蔵野市  大沢さん


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盛岡市内で本宮さん


・昭和39年7月22日

・宿泊地ー盛岡市(本宮さん宅)
・走行距離ー?キロ
・使用金額ー?円
・天気ー曇り

六時起床、出発を10時と二人で決める。のんびり食事の用意をする。ゆうべ貰ったみそでみそ汁を作る。 鯖を買ってきて焼く。豪華な食事だった食事が終わったのは9時を回っていた。しかし今日は急ぐことはない。それに今日は二人なので不思議に落ち着く。

大沢さんと花巻市まで一緒に走り、花巻泊まりの大沢さんと市電のレールの上で別れを惜しむ。11時半だ、これから北海道にも行くそうだ。また会えるといいけど。さあまたひとりだ。

4時前に盛岡に着く。文通をしている本宮さん宅を訪ねる。家族の人たちは、とっても暖かく迎えてくれる。自分もこんな人間になりたいと思う。夕方本宮さんと一緒に、自転車で高松公園に行く。池の周りは桜の木がぐるっと植えてあり、花の季節はさぞ美しいだろう。久しぶりにボートに乗って遊ぶ。家に帰ったら心のこもった夕食が俺たちを待っていた。ああ今日は良い日だった、心より感謝します。おおきに。

岩手県盛岡市 本宮さん

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ほとんどこんな道ばかり
とても乗って走れない。


・昭和39年7月23日

・宿泊地ー清水頭小学校
・走行距離ー?キロ
・使用金額ー?円
・天気ー曇り

盛岡を出発して水戸までは思ったより道路が良いのでうれしい。でも工事中のところも多くそんなとこは毎度ながら泣けてくる。。この辺は、一戸、二戸、三戸と十戸ぐらいまで土地の名前があり面白いところだ。三戸は大分大きな町だ。

十和田湖に行く道を間違えて、随分戻る。もっと早く道を聞けば良かったのに腹の立つ。間違えた道を戻るときの情けないことは、俺しかわからんだろう。十和田湖に行く道はむちゃくちゃに悪い。

6時過ぎだと思うけど、清水頭小学校に着く。今日は気持ちが焦ったので、ダウン寸前だ。清水頭小学校に行き、ちょっと気が引けたけど、思い切って泊めて欲しいと頼んでみる。快く先生が泊めてくれたのでよかった。安心して近所の店で、米と丸干しを買う。学校のガスを借りてご飯を炊く。食べようとしたら、校長先生が夕食をご馳走してあげると、わざわざ来てくれたので、炊いたご飯は明日食べることにして、喜んでご馳走になる。夜は、料理の教室に寝かせて貰う。屋根の下はほんまにありがたい。


全景

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木に名前を彫る

・昭和39年7月24日

・宿泊地ー黒石市 黒滝さん宅
・走行距離ー?キロ
・使用金額ー?円
・天気ー小雨 強風

清水頭小学校を出発。これは又ひどい道だ、国道のつもりでどんどん走っていたら、なな、何と言うことだ、道路に柵がしてある。迷ったけど前進あるのみ。自分で柵を開けて進む。アメリカの西部にでも行ったような気分になったが、この道は市道か町道か村道か?もしかして私道で鉄砲を持ったカーボーイがきて「お前は何処から来た、怪しい奴だ」ズドンとやられるんじゃないかと思うほど寂しい道だ。家は一軒もないし、車だって一台も会わん。いったいどうなってるんだ。歩け歩け!千メートルもあるような峠を越えたけれど、雨のために寒いし、風に身がちじむ思いがする。途中大きな木に「大阪市有城」とナイフで刻んでやった。いつの日かこの木を見に来たいと思う。

夕べのご飯を食べながら走る。標高650メートルの十和田湖の山小屋に着いたのは、9時30分だ。ストーブで暖を取らせて貰い、手も足も体もまるで軽くなる、火のありがたさを知る。ご飯を食べ、ちょっとゆっくりして、10時出発。さあもう少しで十和田湖だ。又道を間違えて戻ったりしたので、十和田湖に着いたのが2時だ。湖というのがこんなに波があるなんてはじめて知った。波の音を聴きながら残っていたご飯をいつものように飯ごうに頭を突っ込んで食べる。


十和田湖


十和田湖はすごい波だった

海のような十和田湖とさよならして黒石に向かう。その道の何と悪いことか、走りようのないジャリ道でむちゃくちゃタイヤがすべってしまい、とても乗ることが出来ない。でこぼこがひどく、まるで川の水が無くなったような道だ。それに登り下りがひどいと来るから泣けてくる。自転車に乗っているより降りて押してる方が多いような気がする。やけくそで走る。黒石市に着いたのは9時頃だった。駐在所で黒滝さんの家を聞いたら親切に家まで案内してくれたが、親切でなく「うさんくさいと思ったから着いてきたのだ」とお巡りさん顔に書いてあった。

百合さんと文通をしていることを家の人に話したら、快く泊まっていけと言ってくれる。しかし百合さんはバスの車掌をしているので家には居らず、なんだか気がひけたが泊めて貰うことにする。東北の人の親切をココでも見つけた。

青森県黒石市 黒滝さん

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青森港 善勝丸

・昭和39年7月25日

・宿泊地ー善勝丸
・走行距離ー?キロ
・使用金額ー?円
・天気ー快晴
黒滝さん宅で大変お世話になる。出発にはおにぎりを作ってもらい、その上信弘さんにお金(500円)まで貰う。ありがたく頂く。ちょっと走るとどうしてもアイスクリームが食べたくなり、店の人にそう言うと、「えらいだろうからみそ汁を呑みなさい」とご馳走してくれる。みそ汁は体に一番いいそうだ。そう言えば力がでてきたようにも思う。

青森港に着いたのはまだ昼前だ。船がでるのは夜とのこと、それまで飽きもせず港の船を見たり、倉庫の中で作っている、ねぶたの人形を見たりして時間を過ごす。夜でる船を昼から待つのだから、俺ものんきというか気が長いというか。青函連絡船は立派で速いけど船代が高いので、350トンの善勝丸と言う船が300円で乗せてくれるというので決める。夜と朝の食事をご馳走してくれた。船の人たちと一緒に頂いたが、うまいのにはビックリした。特にみそ汁は美味しかった。でも船のエンジンの音のすごいのと揺れるのには参った。こんなに大きな船に乗ったのははじめてなので面白かった。

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